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アジアを一つとしてみる タイの大学訪問記 その1

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 昨日、2月20日の日経新聞の第一面のトップ記事は、「秋入学、変革のうねリ」と題して、東京大学が、グローバル化に向けて、海外の大学制度に対応して秋入学を制度化するというものであった。秋入学は、好ましいことだと私は、思う。日本の大学も重い腰を持ち上げ、ようやく、国際化にむけて始動するようだ。中国をはじめアジアの優秀な学生を迎え入れたり、日本の学生がアジアを一つにして相互に発展する環境を早く整えなければならない。基礎研究、文化的な分野でしっかりした基盤を持つ日本の大学が世界の中で特徴を出し、世界に貢献するためには、必要な改革である。日本の組織は、いったん決断できれば成果が期待できると思う。

 さて、これから、タイの大学の話を始めよう。ある意味で、ユニークな視察団の一行が、タイの大学を訪問した話である。2012年2月12日から18日までの一週間、私は、タイの大学、4校を視察した。弊社の提携先である中国大連の東軟学院の国際学部長、IT学部の教授、日本部の部長、スタッフの4名に加えて、日本からは、私一人だけで合計5名である。一週間、中国人の中で行動する。まさに、この訪問プロジェクト自体が、クロスカルチャである。訪問先での公式なミーティングの場は、殆ど英語であるが、会食の場では、中国語、英語、タイ語、日本語が飛び出す。公式、非公式の場、訪問先との会合、会食、史跡訪問など、現地の人と本音で会話できたと思う。

 今回の訪問の目的は、東南アジアで最も経済力のあるタイ国内の様々な大学と中国の大学との交換留学プログラムを紹介し、提携すると共に、社会人教育(大卒後の社会人向けグローバル教育)に対する興味とニーズを探るというものだ。
 
 タイは、中国南部の雲南省から比較的近い。タイ人の起源は、中国の四川省付近から漢民族の勢力拡大に伴って、何百年もかけてアジア南部に移った。この間にタイを取り巻くミャンマーやラオス、カンボジア、ベトナムなどの諸国にまたがる地域で、様々な国が生まれ、滅びたのちに現在のタイの姿になっている。我が国とは、山田長政の時代から友好関係が続いており、日本、中国の両国ともに国際的に親交が深い。今回の訪問での私の立場は、東軟学院の提携先を探す視察団の一角として、社会人教育を実施している重要パートナーの立場で参加した。日本人ただ一人である。興味深いことは、タイは、80年代からアジアの優等生として、日本とも経済的関係を保ちながら急成長した。そのタイにある4つの大学が、提携先としてやってきた中国のIT分野とグローバル教育で有力な新興の中国の大学に対して、どのように興味を持ってくれるのか。また、タイ側から見た東軟学院の重要パートナーである日本のコンサルティング企業が、どのように評価されるのか。さまざまな訪問先の反応を楽しみにしていた。また、タイの大学のグローバル上の関心事や教育のレベル、大学生の関心事や勉強に対する姿勢についても知りたいと思っていた。これらについては、別途詳しく述べる。

 一般的にタイの人々は、やさしく、静かで、ゆったりとした性格で、外部の人々に、微笑みをもって接するといわれている。まさに、どの大学を訪問しても、聞いていた通り、フレンドリーである。タイ人の歴史も日本同様、農耕を中心とした小さなクニが、集まって、もう少し大きなクニ(タイではムアンと呼ぶ:政治権力単位)を創り、それが集まって王国を形成し、それらが勃興、衰退を繰り返し、今の姿に至っている。ムアンは、日本でも戦国時代に似たものが存在している。農耕という点でも日本文化と共通する点は、多く存在する。どうも、タイ人のやさしく、ゆったりとした態度は、農耕ならではの何かを継承しているようだ。タイ人は、また、手先が器用だ。有名なシルクや焼き物など見事な工芸品が多くあるのも日本に似ている。

 私は、タイ人と話をして、日本人と似ている点を多く発見した。一方、現在のタイという国土には、タイ人のみならず中国人や他の民族も数多く暮らしている。タイ人が、中国を起源として南下したために、現在のタイの周辺諸国にもタイ人が、またがって暮らしている。中国、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムには、いくつかの違う人種が、居るが、それぞれ、国境をまたがって存在している。いずれにせよ、タイ一国をどんな国であるかを語ることより、東南アジア一帯で、考えないと国、文化、人種など間違った見方になると思う。現在、タイは、人口6千3百万人、国民一人あたりのGDPは、4千数百ドルに達しており、経済的に周辺国に対して求心力を持っているといえる。

 また、現在のタイの国土は、中国を源流としたメコン川などの国境をまたがった大きな河川の流域に沿って、南北に延びる回廊と東西回廊が交わる要所にあり、周辺国との交流が容易である。さらには、海側からも遠くは、インドからの交易もあった。今でも、その地政学的な位置づけでは、タイが東南アジアの中心である。

 さて、実際の訪問の結果、どのようなことが分かったか、簡単に述べよう。

 今回の訪問大学は、バンコクで2校、ナコンパトム(仏教が伝わったとされるバンコク郊外の都市)で1校、日本でも観光で有名なタイ北部のチェンマイで1校である。
次号に続く

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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