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【連載:IT哲学のススメ】その4 林が考えるIT企業

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さて、今回は、私の考えている成功する企業について、IT企業を例にとって一緒に考えてみよう。

企業の使命と戦略は、極めて重要であることは、すでにその3までのブログで繰り返し述べている。

ほとんどの企業では、その企業の開始時点に、最初の参画者(経営陣、最初の参加者)が、「どんな使命を果たすための企業にするか」を考えて、事業を開始している。つまり、どんな企業でも、何のために会社を設立し、事業を行うのかについては、成功するかどうかは別として、明らかになっているはずである。
これは、各社のホームページで、理念や事業説明、設立経緯などを覗けば知ることができる。そしてできれば、その企業が他社とは何が異なり、どのような強みがあるのかについても深く追求したうえで、設立趣意に盛り込むべきである。
将来、その企業が成長することによって、どのような良いことが顧客に実現できるのか、どんな素晴らしい世界が待っているのかを、設立メンバーで議論し、同意し、公表するのだ。

例えば、クラウド上で特定分野のサービスを提供するIT企業であれば、そのサービスが普及することによって、顧客である企業が、どうポジティブに変化するか、どんなビジネスチャンスをもたらし、どんな世界が実現できるか、図や場合によっては動画などによって分かりやすく示すとよい。 
このような検討プロセスを進めるうちに、企業の経営陣・社員・パートナーなどの各メンバーは、学習し、動機づけられ、さらには、チームの結束力も高まり、企業がより強くなり、方向性・推進力を得ることができる。

次に本当に大事なことは、せっかく高まったメンタル・方向性・推進力を“実のある形”にすることである。“実のある形”にするためには、何を加えればよいのだろうか?やり方を知らないからできないのか?
私は、この部分に拘り23年もの間、会社を経営してきた。

私は、数多くのIT企業を見てきたが、上記の方向性と推進力を持った企業は、数多く設立されている。しかし、様々な企業のホームページを見ると、設立動機は充分であるのに、成功確率を上げるための哲学はなく、個々の社員の実力に頼っていたり、せいぜい流行りのもっともらしい技術を使うふりをしているだけである。

もしそのようなIT企業に、本当に体を張って、その使命の実現を望んでいる経営者や社員がいるのならば、以下のことを必死で考えて実行してほしい。

・企業使命に従い、顧客へのサービス実現のための提案から開発・導入・定着までのあらゆるストーリーを、具体的なプロセス(段取り)を示しながら、経営者・社員・顧客が共通に理解できるまで落とし込む。おそらく顧客の状況に応じて、2~3種類のストーリー(パターン)が、明確になるはずである。

・各ストーリーは、5~6個のフェーズに分解できる。各フェーズは5~7のタスクに、さらにはサブタスクに分解できる。各タスクには、開始条件、インプットと成果物が定義される。各タスクを実行するためには、分析や設計などのテクニックを適用する。テクニックは、時にIT化されたツールを使用したほうが効率的で、のちに再利用できるかもしれない。

・顧客の要望・要求を察知した時点から、解決策の提示・実現に至るまでのしっかりとした整合性のとれたストーリーにすることが、IT企業にとってきわめて重要であり、避けては通れない。

私が、ここで最も言いたいことは、「IT企業にとって、顧客への使命を達成するために、複数の自信の持てるストーリーを持っていることこそが最も大切であり、成功確率を高め、顧客の満足を獲得し、自社の生産性までも高めることになる」ということである。

上記のストーリーを繰り返し社内で適用することが、その企業のIT哲学の確立に結びついていくことになる。IT哲学をメソドロジーと言い換えても良い。

企業の設立動機から、その企業の行動指針が生まれ、企業が組織的に学習することによって、しっかりとした技術哲学のある企業になれると私は信じている。

(次号は、IT哲学モデルの解説をする)


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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