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6Gが切り拓く2030年の未来と技術開発体制のあるべき姿(その1)

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1. はじめに

移動通信システムの世界では10年ごとに新しい通信システムが生み出されており、現時点(2021年)で「超高速/大容量(eMBB):最高伝送速度10Gbps」、「超低遅延(URLLC):1msec程度の遅延」、「超多数同時接続(mMTC):100万台/km²の接続台数」という特徴を備えた5Gまで運用されている。総務省の資料によると、現特徴のさらなる高度化に加え、「超低消費電力」、「自律性」、「拡張性」、「超安全・信頼性」の機能追加を6G(Beyond 5G)での要求条件とされている。

総務省で検討した戦略ロードマップを図2に示す。戦略パートごとに2030年までの取り組みを「先行的取り組みフェーズ」と「取り組みの加速化フェーズ」に分けて検討している。特に「先行的取り組みフェーズ」において、集中的な取り組みを推進し、成功のモデルケースを多数創出させようという意図を感じると。また、中間的な報告として、2025年に開催される大阪・関西万博を機に「Beyond 5G ready ショーケース」として展示していく予定となっている。

日本の戦略として、他企業のホワイトペーパーでも軒並み「2030年での6G社会実装」を目標としているが、2030年の社会問題はどのようなものがあるだろうか。大きな問題の一つとして、「ハイパー高齢化」が挙げられる。内閣府によると、2030年の日本では高齢化率31.8%(国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者、2020年:28.7%)の社会となり、2030年の日本の生産年齢人口率は約58%(2020年:約60%)となる見込みである。高齢化社会について、日本は世界のトップを走っていることも分かっている。WHOでは21%以上が「超高齢化社会」と定義しており、2030年の日本は「超高齢化社会」を超える「ハイパー高齢化社会」と言える。「ハイパー高齢化社会」になることで、社会保障関連費の増大、地方都市の衰退、労働力の不足などの問題が発生する。

上記のような「ハイパー高齢化社会」を踏まえ、2030年の日本のライフスタイルに関しては、主に「働き方」、「健康づくり」、「移動手段・住まい」、「趣味・娯楽」のニーズがより一層重要視されると考えられる。
各ニーズについて、自身の考えに関する要点を以下に記載する。詳細については、次章で述べるものとする。
「働き方」のニーズ:少人数・高齢者でもオペレーションを回せる働き方が可能となる(特に危険の多い工場など)
「健康づくり」のニーズ:いつでも・どこでも健康のチェックが可能となる(高齢者の通院頻度も減らせる)
「移動手段・住まい」のニーズ:自動運転や遠隔作業の活用により、車社会かつ少店舗数の田舎でも質の高い生活が可能となる
「趣味・娯楽」のニーズ:XR※3を活用して、外出しない高齢者が、家に居ながら運動が出来る体感型ゲームやプロなどから手厚いレッスンを受けることなどが可能となる。

2. 2030年の各社会ニーズの想定事例に対する6Gの要求条件概要

2030年の各社会ニーズの想定事例に求められる6Gの要求条件概要を考えると、以下の通りになる。

①「働き方」のニーズ

「働き方」のニーズでは、FA領域での想定事例を考える。
例えば、FA領域ではMESレベルで数百msec周期の制御を行っているが、台車や自動搬送装置(AGV)などの移動設備からは制約条件(例えばケーブルベアのスペース制約など)が厳しく、リアルタイムな大容量データ取得や既設設備の改造(信号増加など)が難しかった。従って、FA分野の移動設備では厳密な監視・最適制御が出来ない事も多く、人手に頼らざるを得ない場面も多々発生している。
一方、ハイパー高齢化社会では人手をかけることは許されず、労働生産性を向上させることを要する為、人手に頼らないオペレーションとする必要が有る。
そこで、仮に1エリアMax5台ほどのAGVを100msecで最適動作制御した際、どの程度伝送レートが必要になるか考える。
AGVの最適動作制御を行った際、仮にカメラが4台・アナログ信号(位置情報など)の計測機器が20種類程度、デジタル信号の計測機器が100種類程度あったとする。なお、リアルタイム性が求められる為、カメラ画像は非圧縮を利用するものと考える。
カメラの画素数を1280×720、フルカラー(3原色の各強さを8ビットで表現するので、各原色で8bit=28段階=256段階の表現が可能)でフレームレートに少し余裕を見て30fpsとすると、カメラ1台当たりに必要な伝送速度は
1280×720[画素]×(8×3)[bit/画素]×30[fps]≒664[Mbps]。カメラ4台で664[Mbps/台数]×4台≒2.65[Gbps]となる。
既存のアナログ信号の計測機器において、必要な伝送速度150[kbps/台]であるから、150[kbps/台]×20台=3[Mbps]となる。これは、デジタル信号の計測機器100種類や、その他の誤り訂正信号や通信プロトコル系の信号を含めても、カメラのデータ通信量(2.65[Gbps])と比較すると極めて小さいので今回は無視する。
1エリアMax5台である為、2.65[Gbps]×5[台/エリア]≒13.3Gbpsとなり、伝送効率を80%・常時通信と仮定して、13.3[Gbps]÷0.8≒16.6Gbps程度が必要になるのではないかと考えられる。故に、5Gの10Gbpsでは対応不可と考えられる。
さらに、無線を用いた信頼性(FAレベル)のあるデータ取得についても、検討を重ねなければならない。例えば、有線を用いた場合、冗長化で信頼性向上を試みることは可能であるが、無線は一般的に冗長化が難しい為、何らかの手法を検討する必要が有る。

②「健康づくり」のニーズ

「健康づくり」としては、ウェアラブルデバイスやリモート診断の活用が期待されている。特に6Gの貢献する分野としては、常時リアルタイム監視で、人の活動に追従しなければならないウェアラブルデバイスが挙げられる。
そこで、仮に1secに1回の測定を周期的に行い、1回10Mbit(生体インピーダンスセンサー、脈拍センサー、画像系データなどのデータ)のデータを生成したとする。このときでも、10Mbpsで済むこととなる。また、実際には信頼性やリアルタイム性がFAほど求められない為、この分野は5G以下でも対応可能でないかと考えられる

③「移動手段・住まい」のニーズ

「移動手段・住まい」については、高齢な退職者のライフスタイル変化によって都会暮らしから田舎暮らしをする人々が増加するのではないかと考えられる。しかし、田舎暮らしには「車社会」や「購買に対する利便性が低い」という壁があった。
ところが、自動車の完全自動運転化(レベル5クラス)は2030年~2040年頃と言われているが、限定地域的な公共交通機関などでは2030年頃にレベル4クラスの自動運転化が実施されるのではないかと考えられる。
自動運転の活用により、タクシー替わりとして、コミュニティバスと個人移動の連携がなされ、現状の時間的・場所的にスポット的な停車しかできない公共機関が改善されると期待される。
すなわち、個人の都合でいつでもどこにでも行けるような、より一層移動の自由が利く田舎の社会形成が出来上がるのではないかと感じている。上記のような自動運転を成立させる為の伝送速度について考える。アナログ信号・デジタル信号とカメラの撮影データでは、カメラの撮影データの方が極めて大きいデータ伝送量となる為、アナログ信号・デジタル信号は一旦無視する。
カメラの撮影データは、①「働き方」のニーズと同様に、リアルタイム(人間の判断が数百msecなので、リアルタイム性を要求されると考える)な非圧縮データを用いて、カメラ1台当たり664[Mbps/台数]とする。仮にレベル4制御時のコミュニティバスに関するカメラ台数が10台程度と考えると、バス1台当たり664[Mbps/台数]×10[台/車両]=6.64[Gbps/車両]が必要となる。従って、伝送効率を80%・常時通信と仮定して、6.64[Gbps]÷0.8≒8.3Gbps程度が必要になるのではないかと考えられる。故に、余裕率等も考えると、自動運転は5Gの10Gbpsでは対応困難と考えられる

④「趣味・娯楽」のニーズ

最近の2Dゲームでも30Mbps以上が推奨されている事と、H.264/AVCで圧縮率が1/80程度で有る事を考えると、VRやARを用いて、かつリアルタイム性を要求される体感型ゲームについて、10Gbpsの5Gでは実現が非常に難しいと考えられる

次に、伝送速度100Gbpsを実現する為には、どのような周波数帯が適切かを考える。
波形には奇数高調波を多く含んでいる為、波形の再現性を考えて、5次高調波辺りまで含んでいることを考慮すると、100Gbps×5倍/2(半波長)=250GHz程度が必要でないかと考えられる。なお、半波長の理由として、0と1を交互に送信したことを考えると、2bpsで1周期(=1波長)、すなわち1bpsで1/2波長になることを考慮している。実際、4Gでは1.7Gbpsで2.6GHz程度を要すると計算され、実際に1.5G~3.5GHz帯で運用されており、また、5Gでは10Gbpsで25GHz程度を要すると計算され、実際に28GHz帯で運用されている。

株式会社NTTドコモのホワイトペーパーにおいても、100Gbpsを目指す6Gでは、90GHz~300GHzの範囲が主な検討対象として考えていることを記載している。この周波数帯の電波は「サブテラヘルツ波」とも呼ばれる。そこで、サブテラヘルツ波を利活用する上での課題を次章で述べる。

6Gでは、他にも宇宙衛星通信や水中ドローン通信などのNTN(Non Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)や大容量スマートフォンで活用することも考えられている。
しかし、個人的な見解としては、宇宙衛星通信分野では、電離層反射や大気吸収の影響により、LF~HFの領域もしくは赤外線~可視光の領域に相当する電磁波を活用すべきと考えられる。また、水中通信分野でも同様に、電磁波吸収率及び透過率の影響で、6Gをフル活用することはやはり非常に困難と考えられる
また、大容量スマートフォンへの6G適用であるが、まずはバッテリーの問題を考える。
各社スマートフォンの単位重量当たりのバッテリー容量推移を図6に示す。フィッティングした結果、約5年で8mAh/g上昇している為、2030年では40(mAh/g)程度になるのではないかと考えられる。なお、全期間を通して、スマートフォンの重さは200g±20%程度であり、年代ごとで大きく変化していなかった。

一方で、3GではWEB閲覧時で1W~1.5W程度※7、4Gでは1W~1.7W程度(個人機器での調べ)、5Gでは1W~2W程度(個人機器での調べ)となっていた。5Gで消費電力が上昇する理由として、5G端末はMassive MIMOによる内臓アンテナの増加や、ディスプレイの解像度が高く、CPU負荷の増大やバックライトで電力消費量が増加する。6Gでさらに複雑な処理をしたとしても、消費電力は2.5W以下でないかと考えられる。
従って、40[mAh/g]/2.5[W]>25[mAh/g]/2[W]である為、単位重量当たりのバッテリー容量増加率が消費電力増加率を上回り、同一の重さであれば特に問題無く動作可能と考えられる。
後は、7GBの速度制限や料金プランなどが有る為、5Gであれば基本機能で消費電力節約になるところを、どこまで6Gを用いたスマートフォンに対するニーズを生み出せるかが鍵になると感じている。
以上を踏まえ、2030年の各社会ニーズの6G想定事例に対する個人的見解をまとめた表について、表1に示す。

表1:2030年の6G想定事例に対する個人的見解

2030年の想定事例 6Gの
必要性
備考
FA領域の移動設備への活用 リアルタイム性を要する監視・制御が前提
自動運転への活用 リアルタイム性を要する監視・制御が前提
ウェアラブルデバイスへの活用 × 5G以下でも対応可能と推測
VR・ARへの活用 リアルタイム性を要する監視・制御が前提
宇宙衛星通信への活用 × 他周波数帯領域の方が有利であると推測
水中ドローン通信への活用 × 他周波数帯領域の方が有利であると推測
大容量通信可能なスマートフォン 6Gに対する強いニーズが見つかれば、推奨されると推測

※1 Beyond 5G推進戦略懇談会総務省資料「Beyond 5G 推進戦略-6G へのロードマップ-」より引用
※2 内閣府資料「令和2年版高齢社会白書(全体版)」より引用
※3 XR:Cross Reality、”VR”・”AR”・”VR”などの総称
※4 総務省資料「2020年の5G実現に向けた取り組み」より引用
※5 総務省資料「第5世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設計画の認定(概要)」より引用
※6 株式会社NTTドコモの資料に基づいた図(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nnw/18/082000116/082300005/より引用)
※7 https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0702W_X00C12A5000000/参照

【執筆者:ITI伊藤 成顕 プロフィール】

大手製造業にて、新設工場の大規模システム構築、IoT構築やAI含む高度なシステム開発などに従事。過去蓄積したノウハウを活用し、DX戦略、DX実現の支援を行うアイ・ティ・イノベーションにて、お客様と共にプロジェクトの成功に奔走している。


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