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【日本のIT産業を新しい世界観で創りかえる】その2 私が本当に伝えたいこと ~9/13開催Leanカンファレンスに向けて

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私は40年以上、IT業界で仕事をしてきたが、仕事の段取りやチームでのマネジメントは、全くと言っていいほど進化していない。対象としているITは、すさまじく進化し高性能になった
が、仕事の進め方は無駄や不要な仕事が多くあり、ほとんど改善されていない。

この点に注力し、IT組織の抜本的な改革を図ることである。ここで説明する改革の枠組みには、3つの重要な視点がある。それぞれについて、解説しよう。


【図1】

図1の中央に位置するカスタマイズされたプロセスが、当該プロジェクトで実施すべきタスク群である。

① 方法論・プロセスの適用による再現性の確保

質の整っている組織では、PMプロセスやアジャイルのフレームワークを共有しており、標準的なプロセスに基づいて、対象となるプロジェクトに適するようにプロセスをカスタマイズし(そのプロジェクト向きに最適化し)、実際にそのプロジェクトで実施するタスク群を決める。プロセスを再利用することにより、再現性や成功への確立が高まる。

私の経験では、1980年代から2000年初頭まで、大企業を中心に多くのプロジェクトで、「方法論・プロセスの定義と適用」が実施されたが、プロジェクトメンバーのスキルや企業文化などの考慮が足りず、十分な成果を上げたとは言い難い。

2000年代に入ってから、スクラッチ型の開発のほかにERPの導入ブーム、eコマースなどのネット文化の普及によりITアーキテクチャの多様化とIT人材の世代交代が徐々に進み、方法論・プロセスの適用効果は、新しい人たちに引き継がれず薄れてしまっている。ソリューションが多様化し、難易度が様々なプロジェクトを実施しなればならない今、プロセスの再利用からのアプローチには限界があり、プロセスの定着ばかり追いかけても大きな効果は得られないだろう。

② 超上流・上流重視の施策(先憂後楽)

次に、80年代から大企業のIT先進企業は、方法論の定義と適用を熱心に実施してきた。プロセス導入の理由の一つは、超上流での仕事の質を重視したいがためである。ITが担う業務や適用範囲の難易度が上がり、企業はITを戦略的(経営の柱)に利用し始めた。必然的に、プロジェクトの目的、範囲、狙いと費用対効果をはっきりさせないまま、プロジェクトが迷走する事例が多く見受けられ、その結果、失敗するプロジェクトが多発した(今でも失敗率は、さほど変わっていない)。
多くの企業でトラブルプロジェクトの原因究明から得た教訓は、「超上流工程・要件定義工程の質の低さ」が真因であることに、多くの責任者が気づいていたということである。
しかし、真因は究明されていてもそれを実施できる人材が、慢性的に不足しているのが現状である。

それでは、プロジェクトに上流やマネジメントに高いスキルを持つ人材さえ得られれば、問題は解決できるだろうか?
答えは、NOである。プロジェクトに関係するあらゆる立場の人々の質の向上が実現できなければ、解決策にはならない。

③ 個人とチームの自律的マネジメントの実現(IT人材の抜本的改革)

プロジェクト活動の基本的なボリュームゾーンを担っているのは、プロジェクトを支える個人であり、チームであることは、自明である。これらの人々の「考え方の質」、「労働の質」が変わらなくては、頭の中で分かっている「①方法論・プロセス」「②超上流重視」の考え方を実行に移すことができない。
私はここで、「もっと、人材の抜本的な改革が必要であった」ということを皆さんに提言したい。

私自身、ITIというコンサルティング会社を経営しながら①②を経営テーマとして30年以上に渡って活動を行なってきた。近年、DXブームになり、より高い組織のケーパビリティの確立と新しい発想で問題解決を行う人材の確保が、あらゆる企業にとってサバイバルの条件になったといえよう。

私は、ここに宣言する。「本気で現場の文化的質、考え方の質、スピードと品質の質の変革」に取り組もう。その要素は、以下の点を実施に移すことである。

・プロジェクトの現場の個人の自律性を高めること
・次に自立したチームビルディングを実現すること
・さらには、自律したチームによる業務直結型のマネジメントを実現すること

この3つのステップを、組織全体で取り組み、実際の仕事に適用し続ける。これにより、
組織の自力が向上し、プロセスの再利用や上流重視の施策が生きたものになる。

ここで最重要なことは、やり方や方向性がわかっているだけではダメで、“組織的に実行すること”で、初めて前に進む。“能書きよりも実行”である。

これらの改革には、かなりの勇気を必要とするが、日本では「トヨタ式マネジメント(Leanと置き換えても良い)」として100年近い歴史があるのだ。現在強いトヨタがあるのは、トヨタが先人から学んだ哲学や文化があるからである。報徳思想など先人の知恵を学び、現場で実践、定着させてきたことで今の強みがある。まさに温故知新という言葉が当てはまる。

トヨタのマネジメントが強力なのは、一つ一つ見ていくと特別な難しいことをやっているわけではない。何が違うかといえば、徹底しているのだ。そして、現場で実行することが組織文化になっているからである。組織に定着したマネジメント方式は、暗黙知になっており、ムダがなく余計な付帯作業がない。結果的に“他社ではマネができない”力の差になっていく。

40年以上変革を行っていないIT組織こそが、日本の伝統的な改革・改善の方法を含めてLeanによる改革を導入すれば、企業は競争力を確保できる。Leanによる仕事改革は、いわゆるIT業界でこれからの考え方として注目されているアジャイルの下支えとなるに違いない。「俊敏に何事も無駄なくこなせる現場を創る」ことになる。

私は、本気で日本のIT業界の改革を実現しようと考えている。そのために、何を今行えばよいのかをLeanカンファレンス2022で、熱意をもって説明するつもりである。

ご参加を心からお待ちしております。

<Lean Conference Japan 2022 Autumn>
2022年9月13日(火)10:00~17:30 オンライン開催(Zoom)
林講演時間:14:55~15:30
▼詳細&お申込み▼ ※外部サイトに移動します
https://lean-conference.com/


★ビジネス情報サイト『経済界ウェブ』の「総力特集:人材育成企業2022」にて、林が人材育成に対する当社の考え方や、第二創業といえる新たなフェーズへと舵を切った想いを語っています。ぜひ読んでみてください。
https://net.keizaikai.co.jp/65643


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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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