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【日本のIT産業を新しい世界観で創りかえる】その1 IT業界は、どのように変化するか

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あれこれ縁があって、9月13日に開催されるLean Conference Japan 2022 Autumnで、登壇することになった。ありがたいことである。私は長年、ITの改革を課題として仕事をしてきたので、そのようなテーマが期待されているのだと思う。そこで、カンファレンスに先立って「2020年代に必要なIT業界の世界観」についてブログを書くことにした。

初回(その1)は、「役に立つITベンダーになるための課題」を、はっきりとさせることから始めたい。

2010年代に入りITの活用がどのような産業にとっても重要になり、DXブームが到来した。DXが“ITの徹底的活用”を意味するのであれば、当然の動向であると私は考えている。

DX時代になってIT産業構造に着目すると、ITベンダーの構造や位置づけを大きく変化せざるを得ないことになる。大事なことは、以下の変化の意味・本質を理解し、実践できるかどうかである。

DX実現のための有能なITベンダーになるためには、以下の5つの条件が必須になる。

①顧客と一体になってITによる価値創造を行う戦略パートナーになること

これは簡単ではない。受託から創造への切り替えが必要である。受託とは、依頼者側が要求を決めて、受託者は要求通りにシステムを設計、構築、導入することである。それが今後は、戦略パートナーとして顧客と協創しなければならない。頭では理解できるかもしれないが、体は簡単には動かないだろう。
この領域は、これまでは一部のコンサルティング会社のみが行ってきたことである。しかしこれからはITベンダーも、これまでの40年余りの経験・身に付いた習慣を180度転換しなければならない。すなわち習慣、マインド、企業文化、哲学、方法論、仕事の指示、評価までも切り替えなければならないということだ。仕事を請け負うマインドを切り替えて、仕事を創造する、生み出す側に立たなければ成り立たない。このことは個人の技量だけでなく、チームでの仕事の仕方、企業文化にも影響する。仕事を一から作り出すような変化を伴うことを覚悟することである。

②2つの意味合いの戦略パートナーへの道が生き残りの条件

◆一つ目は、顧客に入り込み顧客と一緒に事業・IT全体の企画、設計、マネジメントを行う役割

メジャーなITべンダーは、「顧客と一体になりDX実現を主導するビジネス」を目指すことになる。冒頭①で述べた通り、これまでと異なったビジネスマインドを要求されるため、かなりの苦労を強いられることになる。

◆二つ目は、特定分野、特定技術を強みとして、部分的なIT実現を行う役割

今後、特定業務などの対象領域のノウハウ、ITテクノロジーは、多様化・専門分化するために、特定の領域に強みを持つITビジネスが成長することは間違いない。例えば、販売、マーケティング、調達、人事、などの特定の業務領域、マルチクラウドの設計技術、IT構想企画、PMなど特定分野での専門性・経験、再現性を高めたベンダーも全領域をカバーするベンダーと共に成長する。
   
③状況に応じて、ITベンダーとしての重要機能や人財の獲得のために、戦略的アライアンスあるいはM&Aなどを行うこと

大胆な価値の創出のために、経験は浅いが、重要な分野にチャレンジが必要になる。その際に、その領域や技術の重要性を判断し、強みのあるベンダーと特別なアライアンスを組んだり、場合によっては、買収も成長の視野に入れる。今後は、IT事業目標達成のために企業の買収まで、通常の選択肢に置くべきである。

④価値創造のための人財育成

新たな価値創造に向けて社員やチームメンバーに対する育成は、変化の激しい時代故に最重要であり、プロジェクト活動と育成を切り離すことはできない。
ITアーキテクチャ設計、データモデリング、PM、アジャイル、クラウド開発・適用、セキュリティなどを学ぶだけではなく、不明な要素を含む仕事を段取り良く進める方法や問題分析を行う力を高めることが重要である。
そもそも、対象のすべてを学ぶことは不可能なため、“本当の課題発見と問題解決能力”が、リーダークラスには必要になる。目標に向かって必要な人を巻きこみ、チームをマネジメントし、あれこれ工夫し目標達成まで持っていく力をつける。

⑤効率性の追求と自律的マネジメントの確立

私は40年以上、IT業界で仕事をしてきたが、仕事の段取りやチームでのマネジメントは、全くと言っていいほど進歩していない。対象としているITは、すさまじく進化し高性能になったが、仕事の進め方は、無駄や不要な仕事が多くあり、改善されていない。
進歩を妨げている一つの理由は、人月単価を基準に見積もりを行っている習慣である。いったん見積もりが確定すると、個人やチームが工夫し生産性を上げても収入は変わらない。経営者もそれで良しとしてきた。
私は、IT業界の改善が進まない理由の多くは、このことに起因すると考えている。これから「ITの仕事自体の無駄取りと自律性のあるマネジメントに変革」を実現するには、何が必要であるかを明確にし、行動していきたい。

そろそろまとめに入ろう。
IT産業は、顧客に対してシステムの外注先から共創するパートナーという位置づけになりつつある。顧客が、自ら主導的に自社のDX実現を推進するようになるためである。

しかし、果たして顧客が、自ら主導的にDXを推進できるのかという疑問が残るだろう。現状では、顧客内にDX人財を育成し独り立ちさせるだけの能力はない。そのような場合ITベンダーから適切な人財を採用すればよい。すでに、ベンダーからユーザ系企業への人の動きは活発になってきている。その流れの中で、「ユーザDX人財」と「ベンダーDX人財」が、混ざり合い成長し、適切なDX人財バランスが、生まれてゆくだろう。

プロフェッショナルの所属先は、自由で良いと私は考えている。むしろ、ユーザとベンダーの垣根がある方がおかしいと思っている。
プロフェッショナルは、どこにいてもプロフェッショナルであるべきだ。そして、プロフェッショナルには、キャリアを創るための“場”が、必要になる。必要なステップを踏んで優れたプロフェッショナルが、生まれるのだ。

プロフェッショナルは、人柄がよく、専門性が高く、自律的に動ける人のことを指す。

その2に続く。。。


       

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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