今回より「マネジメントシステム(以下、MS)とEAの活用」をテーマにブログを書かせていただくアイ・ティ・イノベーションの井﨑です。どうぞよろしくお願いいたします。まずは自己紹介を交えながら本ブログのテーマ設定の背景という意味で、DXなど昨今のIT関連の動向に対して私が抱く課題認識や想いを綴っていきます。複数回に渡って書いていきますが、今回はその前振りという位置づけでお付き合いいただけると幸いです。
今回の目次はこちらです。
1. 本テーマに至った背景 (課題認識)
私は前職の製造メーカーのIT時代も含め、約20年間ITに関わる仕事に従事してまいりました。ITと一言で言ってもいろいろありますが、ざっくり言うと社内SEから始まり、PM、IT企画、チームマネジメント、グローバルITメンバーとの協働などをひととおり経験してきました。現在はコンサルタントとして日々ユーザー企業様のITシステムのAs-IsからTo-Beへの移行に関わるコンサルティング活動に勤しんでいます。その中で時と共に複雑化していくITシステムを目の当たりにしてきました。ITを取り巻く環境面においても複雑化しやすくなっています。例えば10年前と比べてもクラウドやRPA、AIなどのITツールの選択肢は増加し、ITツールの導入のハードルは劇的に下がり、その傾向は現在も続いています。見方を変えると今後ますます複雑化しやすい環境になっていくということです。
ITシステムが複雑化してしまう理由や背景については、弊社中山のブログ (アーキテクチャ反面教師) や弊社松井のブログ (エンタープライズアーキテクチャとは) をご一読いただくと、より感傷的に理解できると思いますが、私の言葉で表現すると、「企業のシステム全体を俯瞰できる共通言語がない」ことが大きな要因および解決すべき課題であると感じています。
2. 共通言語の必要性
まず「共通言語」について、スポーツを例にとって説明します。例えばサッカーの試合を行うとき、サッカーのルールに従う必要があります。また「4-4-2」や「3-4-3」などの用語によりフォーメーションを認識したり、作戦ボードを使って試合中の動きを確認したりします。同じく野球には野球の、ラグビーにはラグビーのルールや用語、道具があります。それらのおかげで試合が成り立ち、スムーズに開催できるわけです。要するに何かを行う際にその利害関係者間のコミュニケーションにおいて共通認識を持つための用語や道具のことを「共通言語」と呼んでいます。
前置きが長くなりましたが、先ほど述べた「企業のシステム全体を俯瞰できる共通言語」というのがブログのテーマでもある「MS」と「EA」と申し上げたいのです。スポーツの例と比べると分かりにくいかもしれませんが、その辺りは今後のブログで具体例を挙げながら一つずつ解説していきます。
3. MSとEAの意味定義
ここで「MS」と「EA」の言葉の意味を簡単に押さえておきます。
MSとは、「方針及び目標を定め、その目標を達成するために組織を適切に指揮・管理するための仕組み」です。代表的なものとしては、ISO 9001があります。ISO 9001は歴史が深く、製造業を中心に多くの企業で導入されています。今後の話を進めるにあたりMSについては「①顧客満足向上を目的としている ②国際規格の中で最も普及している ③汎用的でテーラリングしやすい」という理由でISO 9001を例に話を進めます。
続いてEAとは、「経営戦略とITを絡めた全体最適化のための概念」です。EAはよくBA (Business Architecture), DA (Data Architecture), AA (Application Architecture), TA (Technology Architecture) の4層(参考 : エンタープライズアーキテクチャとは(2))に分けて説明されますが、DXの流れとともにそれらがより動的になってきています。下の図2は弊社が所属しているIasaの創設者であるアーロン氏のブログから引用したものです。
上記の説明は抽象的で理解しづらいかもしれないので、MS、EAの活動の中で得られる成果物を並べてみて具体的なイメージを持ちたいと思います。
成果物の例 | |
MS (ISO 9001) | EA |
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いかがでしょう?なんとなく共通項が見えてきたでしょうか。MSの手順書やEAのビジネスプロセスマップなどは関係ありそうに見えると思います。
企業によっては上記のような文書は存在するものの、それぞれが有機的なつながりを持っておらず、また存在感が薄いというか、知る人ぞ知る存在になっているケースは少なくないのではないでしょうか。せっかく多額のお金をかけてISO認証を取得・維持しているわけですから有効活用したいものです。もちろん、ISOを取得していない企業も独自のマネジメントシステムを運用している場合は、その運用・維持に時間と労力(例:内部監査)をかけているはずですので同じですね。
なお、ここで申し上げたいことは「文書管理をちゃんとしましょう」「ISO 9001を導入しましょう」ということではなく、「企業というシステムは上記のような構成要素で成り立っている」ということです。
これらの構成要素の関係性を見える化し、俯瞰することが先ほど申し上げた「共通言語化」に当たりますが、それにより以下のようなメリットを享受できます。
共通言語化のメリット |
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4. 今後のブログ題材
今回はテーマ設定の背景とMSとEAによる共通言語化の必要性について書かせていただきました。今後のブログではISO 9001:2015の各章とEAとの関係性を題材としながら「共通言語化」の具体的なイメージを書いてまいります。
タイトル (予定) | 内容 (EAとの関係性の解説) | |
第2回 | ビジネスプロセスを見える化しよう! | ISO 9001 序文 プロセスアプローチ |
第3回 | メタデータを整備しよう! | ISO 9001 3章 用語及び定義 |
第4回 | ビジネスニーズをまとめよう! | ISO 9001 4章 組織の状況 |
第5回 | ロードマップを整備しよう! | ISO 9001 6章 計画 |
第6回 | 人財を育てよう! | ISO 9001 7章 支援 |
第7回 | 積極的に運用しよう! | ISO 9001 8章 運用 |
第8回 | 改善ポイントを見つけよう! | ISO 9001 9章 パフォーマンス評価 |
第9回 | 少しずつ良くしよう! | ISO 9001 10章 改善 |
ご一読いただきありがとうございました。
次回も引き続きよろしくお願いいたします。