
気付けばもう年末。個人的に振り返ると今年もあっという間の1年でした。今年も何かといろいろありましたが、年末年始の休みの間に少し落ち着いて自分自身のパフォーマンス評価も兼ねて振り返りの時間を取りたいと考えています。
では本題。今回は「改善ポイントを見つけよう! ~ EAを用いたパフォーマンス評価 ~」と題して、「ISO 9001 9章 パフォーマンス評価」を参考にしながらEAの観点も踏まえて見ていきたいと思います。
目次
1. ISO9001の9章が要求していること
2. パフォーマンス評価とは
3. 評価指標の位置付け
4. EAを活用した情報システムのマネジメントプロセスの評価
5. まとめ (ChatGPTによる要約)
1. ISO9001の9章が要求していること
ISO 9001:2015の9章は「パフォーマンス評価」に関する部分です。この章は以下の三つの主要な部分から構成されています。
セクション | 説明 |
---|---|
モニタリング、測定、分析、評価 |
✓ 品質マネジメントシステムの有効性を評価するためのモニタリングと測定。 ✓ 統計的手法を用いた品質の評価。 |
内部監査 |
✓ 品質マネジメントシステムが適切に運用され、効果的に機能していることを確認するための定期的な内部監査。 ✓ プロセスの一貫性、非適合性の特定、改善の機会の特定を目的とした監査プロセス。 |
マネジメントレビュー | ✓ トップマネジメントによるシステムの有効性、改善の必要性、リソースの適切性、品質目標の達成状況のレビュー。 |
9章は、組織がその品質マネジメントシステムが求める要件を満たしているかどうかを継続的に評価し、必要に応じて改善することを要求しています。個々の節の解説は専門サイトやYoutubeに委ねますが、端的に言うと9章はPDCAのC(チェック)にあたり、各節はチェックを行う人やチェックの観点が異なります。
2. パフォーマンス評価とは
分かりやすい例で言うと、営業プロセスのパフォーマンス評価の指標の1つとして売上額や利益額、利益率などがありますね。これらは一般的に目標値に対して実績や見込みの数値と比較して、良し悪しを判断します。つまり、パフォーマンス評価とは端的に言うとプロセスの良し悪しを統計的な指標(根拠)を持って判断することと言えます。以下に一般化した評価指標の例を挙げます。
評価指標 | 説明 | 例 |
---|---|---|
生産性 | 与えられた時間内の仕事の完了の度合い | 1時間あたりの製造数、1人あたりの処理された依頼数 |
品質 | 製品やサービスの品質水準 | 不良品の割合、顧客クレームの件数、返品率 |
効率 | リソースの効果的な使用 | 使用された原材料に対する完成品の出力、エネルギー消費量 |
顧客満足度 | 顧客が製品やサービスに対する満足度 | 顧客満足度調査の結果、リピート顧客の割合 |
時間 | プロセスやタスクの完了時間 | 納品までの平均時間、サービスレスポンス時間 |
コスト | プロセス実行のコスト | 単位あたりの生産コスト、プロジェクトの総コスト |
3. 評価指標の位置付け
以下はこれまで幾度となく登場したタートルチャートですが、パフォーマンス評価は図の右下の部分になります。
上の図を見ながら少し普段のみなさんの業務がうまく回っているかどうかを示す指標を想像してみてください。受注や売上、経費などお金に関する指標(財務指標)は比較的パッと出てくると想像しますが、お金以外の指標(非財務指標)はいかがでしょうか。あくまで私の経験上の話ですが、指標が存在していたとしても例えばタートルチャートで示しているインプットやプロセス、手順、力量などアウトプットを生み出す要素に分解して体系的に問題・改善個所を特定するといった動きにつなげているケースもあまり多くないように感じます。
受注や売上は重要な指標ですが、それらは結果指標ですので、仮にそこに問題が生じた場合はその前段に解決すべき課題があり、そこに先行指標を設けることでリスクを把握することができます。弊社はコンサルティングを生業としていますが、受注や売上を拡大させる重要な手段の1つは人的資産の価値を向上させることです。つまり先行指標は個人の力量や組織のケイパビリティとなります。私自身や組織の中を見渡してもまだまだ成長・改善の余地があるので、今後はそれらを関係者の間で共有しながら、より人財育成や組織のケイパビリティの向上に努めていきたいと考えています。
4. EAを活用した情報システムのマネジメントプロセスの評価
ここから少し「情報システムのマネジメント」に絞って話をしますが、情報システムというのはその名の通り「システム」ですので個々の要素が相互に影響を及ぼしながら、全体として機能するまとまりや仕組みになっています。
従来の評価方法としては、それぞれの要素(個別のシステムごと)に開発・運用・保守などの個別プロセスが存在し、QCDなどの軸で評価を行っているケースが多い印象があります。
一方、昨今はDXの名の下でビジネスとITのつながりがますます深くなり、データドリブン経営など、データの利活用がますます求められています。そのような背景においては個々のシステムの評価だけでなく、情報システム全体のパフォーマンス評価がより重要になってくると思います。例えばビジネスの変化に柔軟に対応するためには、スピードとコストを重視した変更が容易なアーキテクチャに変えていく必要があるかもしれません。その場合の評価指標は「システムの拡張や更新の容易さ」といったものになろうかと思います。以下にEAのレイヤーごとの評価指標の例を参考までに示します。
EAレイヤー | 評価指標 | 定量的把握方法 |
---|---|---|
ビジネスアーキテクチャ | ビジネスプロセスの効率 | プロセス完了までの時間測定、作業量の分析 |
戦略実現度 | KPI(重要業績評価指標)達成率の測定、戦略目標とのギャップ分析 | |
コスト削減 | コスト削減前後の財務データ比較、ROI(投資収益率)の計算 | |
データアーキテクチャ | データ品質 | データエラー率の測定、監査の実施 |
データ管理の効率 | データアクセス・更新時間の測定、データベースパフォーマンス指標 | |
データセキュリティ | セキュリティ違反インシデント数、復旧時間の記録 | |
アプリケーションアーキテクチャ | アプリケーションのパフォーマンス | 応答時間の測定、トランザクション処理速度の分析 |
システムの可用性 | 稼働率の計算、システムダウンタイムの記録 | |
メンテナンスとスケーラビリティ | メンテナンス時間とコストの記録、拡張性評価 | |
テクノロジーアーキテクチャ | インフラストラクチャの安定性 | 稼働率の計算、障害発生頻度の記録 |
コスト効率 | ITインフラ全体のコスト対効果分析 | |
技術革新の適応 | 新技術導入プロジェクトの期間と成果の評価 |
EAは全体最適化のための考え方であり、ビジネスとITを融合させ、ビジネス価値の最大化を求めるDXの考え方と親和性があると考えます。したがって情報システムのパフォーマンス評価にEAの考え方を適用させることは理にかなっていると思います。もちろん評価の抽象度が高い状態ではフワッとした共通認識で終わる(アクションに繋がらない)恐れがあるので、鳥の目で全体の評価をし、優先順位を付けて虫の目でシステムごとに多角的に個別評価するといった抽象と具象を往復することも重要ですね。
5. まとめ (ChatGPTによる要約)
以下、前回のブログ同様、今回の内容をChatGPTに要約してもらいました。(レスポンスの中身そのまま)
( ChatGPTによる本ブログの要約 )
次回はISO9001 10章 改善について見ていきたいと思います。
タイトル (予定) | 内容 (EAとの関係性の解説) | |
第1回 | MSとEAを共通言語にしよう! | MSとEAの関係性 |
第2回 | ビジネスプロセスを見える化しよう! | ISO 9001 序文 プロセスアプローチ |
第3回 | メタデータを整備しよう! | ISO 9001 3章 用語及び定義 |
第4回 | ビジネスニーズと組織の状況を把握しよう! | ISO 9001 4章 組織の状況 |
第5回 | ロードマップを整備しよう! | ISO 9001 6章 計画 |
第6回 | 人財を育てよう! | ISO 9001 7章 支援 |
第7回 | 積極的に運用しよう! | ISO 9001 8章 運用 |
第8回 (今回) |
改善ポイントを見つけよう! | ISO 9001 9章 パフォーマンス評価 |
第9回 (次回) |
少しずつ良くしよう! | ISO 9001 10章 改善 |
ご一読いただきありがとうございました!