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ビジネスニーズと組織の状況を把握しよう! ~ 目的と状況の把握 ~

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 今回はビジネスニーズと組織の状況把握についてISO9001の第4章を横目で見ながらこの辺りの話に関して普段私が考えていること、感じていることを書いてみたいと思います。
ちなみに今回の話はEAのレイヤーで言うとBA(Business Architecture)の部分に該当します。目次はこちら。

目次

1. ビジネスニーズとは

2. 組織の状況

3. 状況把握ツールとしてのEA

4. まとめ

1. ビジネスニーズとは

 ビジネスニーズとは端的に言うと「顧客が求める価値」です。
企業(以下、組織)の存在意義は顧客が求める価値を自社の商品やサービスを通じて提供することにあります。


 
図1 ビジネスニーズ = 顧客が求める価値

 
 このビジネスニーズというのは時代とともに変化するという性質があるので、組織が存在し続けるためにはビジネスニーズを捕え続けることが必要になるというのは自明ですね。
 顧客が価値を感じる要素には、商品やサービス自体の機能的な要素や価格の安さなどの金銭的な要素に加えて、それらの提供スピードや使いやすさ、体験など非機能的な要素があります。昨今は競合他社の商品やサービスとの差別化要素としては機能的な要素よりも非機能的な要素の方が価値を決める割合としては大きくなってきているようにも感じます。

 これは私個人の話になりますが、ニーズの変化の例を一つご紹介。
私は最近Youtube Premiumを購入しました。以前の私ならCMもそこまで気にせず無料版で満足していたのですが、Youtubeのコンテンツが充実してきたこともあり、Youtubeを観る時間が増えてきました。結果としてCMを観る時間も増えてきたため、新たに時間の確保とストレス解消という価値を購入したというお話です。まぁYoutubeの戦略にハマったという見方もできると思いますが。。。

2. 組織の状況

 顧客の求める価値の変化に合わせて柔軟かつタイムリーに”組織を変える”のはそう簡単にはいかないというのも多くのみなさまに共感いただけると思いますが、上述のロジックから言うと、遅かれ早かれ何らかの手を打つ必要はあります。
 ただ、”組織を変える”と言っても闇雲に組織変更を行ったり、新たな部署を作る前に、まずは実際に顧客の声を聞いたり、マーケティングツールなどを駆使して仮説を立てるなど、何らかの手段で顧客の求める価値を定義することが必要です。
その後、定義した価値を最大化させるためのプロセスや組織を決めるのですが、それらを決めるにあたって、現在の組織が置かれた状況を客観的に知ることが必要です。


 
図2 組織の状況の把握

 
 ここでISO 9001の第4章の抜粋をご紹介します。

4.1 組織及びその状況の理解
 組織は,組織の目的及び戦略的な方向性に関連し,かつ,その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える,外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
 組織は,これらの外部及び内部の課題に関する情報を監視し,レビューしなければならない。

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
 次の事項は,顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため,組織は,これらを明確にしなければならない。
a) 品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
b) 品質マネジメントシステムに密接に関連するそれらの利害関係者の要求事項
 組織は,これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し,レビューしなければならない。

 上記は堅い表現に見えるかもしれませんが、誤解を恐れずにまとめると以下になります。

顧客や社会が求めていること定量的・定性的に把握しようね。(目的の把握)
自分たちが置かれた状況を定量的・定性的に把握しようね。(状況の把握)

 目的と状況を把握することで取り得る手段は徐々に見えてくるのですが、この ”定量的・定性的に把握” というのが非常に難しくなってきていると感じています。
以下に組織からみた外部と内部における課題の例を挙げていますが、内部の課題を見ても”把握できている”と自信を持って言える組織は少ないのではないのでしょうか。

表1:組織からみた外部と内部の課題の例
外部 内部
  • 自然
    • 気候変動
    • 自然破壊
  • 社会
    • 少子高齢化
    • 人口減少
  • 政治
    • 政権交代
    • 政策変更
    • エネルギー問題
  • 経済・市場
    • 為替変動
    • 税制変更
    • 市場規模の変化
  • 法規制・業界ルール
    • 法律制定・改正
    • 規制緩和・強化
  • 競合
    • 競合他社との格差
    • 破壊的イノベーション
  • 顧客要求
    • 要求事項の高度化、高速化
  • 供給者
    • 供給者の移転、撤退
    • 廃業、倒産
  • 市場
    • 海外展開、新たな市場
  • 業績
    • 売上、利益
  • パフォーマンス
    • 品質、コスト、スピード
  • リソース確保
    • 人、原材料
  • 新規事業
    • 新製品、新サービス
  • 組織体制
    • 組織力強化、役割の再定義
    • 拠点の集約、分散
  • コスト
    • 経費削減、無駄の排除
  • 設備
    • 設備老朽化、性能不足
  • 情報システム
    • データ活用
    • 情報損失、漏洩
  • 業務合理化
    • 生産性向上
  • 仕事環境、労働安全衛生
    • リモートワーク、残業、副業
    • 心理的安全性
    • 労働災害
  • 技術力
    • ものづくり、管理ノウハウ
  • 人材育成
    • スキル継承
    • 経験者、有識者の退職
  • 事業継続
    • 緊急時の対応

 

3. 状況把握ツールとしてのEA

 組織の状況が把握しづらくなっている要因はさまざまですが、その要因の一つとして日々のEAコンサルティング活動を通じて感じるのは、ITの導入によってプロセスの自動化はある程度進んでいるものの、そこで生まれた情報を全社の資産として活用できていないケースが多く、近視眼的な改善、IT化のみを繰り返し、ますますITが複雑化しているということです。

 ここで誤解無きよう申し上げたいのは、近視眼的な改善が悪いのではなく、顧客が求める価値を最大化するシステム(MSそのもの)を把握する手段に改善の余地があるということです。

 EAは組織の情報システムの見える化ツールとして語られることが多いですが、俯瞰図をパワポにまとめて終わりといった一過性のものではなく、継続的な改善を行うための図面であり資産です。MSも同じく継続的な改善を促すツールであり、”顧客が求める価値の最大化”が最終目的である点も共通しているため、非常に親和性が高いと感じています。

 ただ、これはあくまで私の経験やISO形骸化の話を聞いての感触ですが、会社の中でMSを推進する組織とEAを推進する組織(IT部門など)の間に壁がある(仲が悪いというわけではなく)というか、協力関係を構築するための潤滑油的な役割や方法論、ツールがなく、結果的に近視眼的な改善に留まっているケースが多いと感じています。

4. まとめ

 多くの企業では個々の部署の視点で見ると取り組むべき改善活動を”ちゃんとやっている”と個人的には感じています。個々の部署が取り組んでいる改革改善をより有機的に繋げることで、全社的な継続的改善のループが生まれていくと考えています。

 そのためにもEAをもっと分かりやすく、使いやすくするために弊社で持ち合わせている方法論やツールをさらにブラッシュアップさせていかねば!と感じている次第です。

 次回は改革・改善を進めるにあたってのロードマップの描き方について、ISO9001の第6章を参考にしながら書きたいと思います。

タイトル (予定) 内容 (EAとの関係性の解説)
第1回 MSとEAを共通言語にしよう! MSとEAの関係性
第2回 ビジネスプロセスを見える化しよう! ISO 9001 序文 プロセスアプローチ
第3回 メタデータを整備しよう! ISO 9001 3章 用語及び定義
第4回
(今回)
ビジネスニーズと組織の状況を把握しよう! ISO 9001 4章 組織の状況
第5回
(次回)
ロードマップを整備しよう! ISO 9001 6章 計画
第6回 人財を育てよう! ISO 9001 7章 支援
第7回 積極的に運用しよう! ISO 9001 8章 運用
第8回 改善ポイントを見つけよう! ISO 9001 9章 パフォーマンス評価
第9回 少しずつ良くしよう! ISO 9001 10章 改善

 ご一読いただきありがとうございました!

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Profileプロフィール

井﨑 学
分析・計測機器メーカーのIT部門にて18年間、BPR、システム企画、EA、マネジメントシステムの導入を推進。 その後、アイ・ティ・イノベーションにてデータ中心アプローチによる上流コンサルティングに従事。 Iasa日本支部会員、DAMA日本支部会員、PMI日本支部会員。 趣味はジョギングと読書。好きな飲み物はコーヒーとビール。

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